ビューラー・ヴィンヤーズ
カリフォルニアワインを象徴する産地、ナパ・ヴァレー。そこを訪ねる観光客やガイドであっても、容易に辿り着くことができぬ奥深い山中にビューラーはあります。地球温暖化による影響なのか、ナパ・ヴァレーのぶどうが谷底と山間で異なる品質を見せるようになった今、ビューラーのワインは、今まで以上の価値が発揮されたものと言えるでしょう。
ワイナリーの歴史は、ジョン・ビューラー・Srがナパ・ヴァレー山間部の土地を手にした1971年に遡ります。当初はぶどう栽培家として生計を立てつつも、ほどなくして醸造所を併設した理由は、他でもない、かねてより夢見るワイン造りの為でした。1978年の生産は700ケース程と僅かな量でしたが、その高い品質が伝え広まることで、ビューラーのワインは年毎にその数を増します。そのきっかけの一つが、1982年に迎え入れた醸造家の功績でした。
醸造家の名は、ハイジ・ピーターソン・バレット。「ワイン批評家の帝王」ことロバート・パーカー氏により、「ワイン造りの女神 ~ナパのワイン・プリマドンナ~」と呼ばれたカリスマ的な女流醸造家です。ナパ・ヴァレーで開催される世界最大のチャリティ・ワインオークション、NVVオークションにて、6,000mlボトル1本に対し、50万ドル(1$/110=5,500万円)もの値が付いた1992年産スクリーミング・イーグルも女史の作。その他、カベルネ・フランの最高傑作と誉れ高い1992年産ダラ・ヴァレ “マヤ”を含め、ハイジ・バレットが手掛けたワインには、世界有数の高額品ばかりが並びます。1990年台に入り頭角を現すハイジ・バレットですが、それ以前の5年に及ぶビューラーの経験こそが、「後年の傑作、ダラ・ヴァレやスクリーミング・イーグルに結実した大きな要因」と伝えらえれます。
ハイジ・バレットの醸造手法が脈々と継承されるビューラーのワインは、その後も至るところで実力を見せつけます。ワイン業界にとっての年間最大イベントに、最有力批評誌のワインスペクテーターにより発表される「The TOP 100」があります。世界のワイン1万数千本の中から上位100本が選ばれる「The TOP 100」で、ビューラーのワインは年間百傑に選ばれること複数回。特にカベルネ・ソーヴィニヨンとジンファンデルは、愛好家による大きな支持を得ています。
近年は、現地ワイン関係者の間で「マウンテン・カベルネ」と呼ばれ、日本の愛好家からは「山カベ」と称される、ナパ・ヴァレー山岳部で産出されるワインとは、他の産地には見出し難い男性的な骨格の備わりを特色とします。数万円に及ぶワインも珍しくない中、ビューラーの各種は消費者に優しい価格が維持されています。